脂質とは

脂質には、なたね油、ごま油などのように常温で液体の「油」と、バター、マーガリンのように常温で固体の「脂」があります。
脂質の働き
脂質は体内で1gあたり9kcalとなり、三大栄養素のうち最も高いエネルギーになります。脂質には体の中でつくることができない必須脂肪酸が含まれており、体の細胞膜の成分やホルモンの材料などになっています。不足すると、発育の障害や、皮ふ炎の原因になったりします。
さらに、脂質は油脂に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・Kなど)の吸収にも役立っています。

◎エネルギー源となる
◎細胞膜の材料となる
◎ホルモンの材料となる
◎脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を助ける
◎皮下脂肪として体温維持や内臓保護をする
などのはたらきがあります。脂質は、普通に食事をとっていれば不足しにくいと考えられていて、むしろ現代の食生活では、とりすぎによる健康障害が問題視されています。しかし、極端な食事制限を続けると、脂質が不足し、肌荒れや便秘などの症状が起こりやすくなることも知られています。女性の場合は、月経トラブルの原因になることもあるようです。
健康を保つためにも、過剰になりすぎず、不足しすぎず、適量をとることが大切です。
1日の理想摂取量
詳しくは年齢によって異なりますが、成人で1日に必要なエネルギーの20~30%ほどを脂質からとるのがよいといわれています。これは1日2,000kcal必要な人では脂質はおよそ55gになります。しかし、食生活の欧米化にともない脂質の摂取量や摂取エネルギーに占める脂質の割合は増加しており、そのことがエネルギー過剰、肥満、生活習慣病の原因になっていることが指摘されています。
現在、日本人全体の平均脂質摂取状況はおよそ25%であり、ほぼ適量であるといわれています。また、質の面からみた時も、日本人が摂取する牛肉や豚肉などの動物性食品、植物性食品、魚類からとる各脂質の割合は、ほぼ望ましいバランスといわれます。ただし、これはあくまで平均した場合のお話です。国民健康・栄養調査報告によると20歳以上で脂質のエネルギー比率が30%を超えてとり過ぎている人は、男性で約2割、女性で約3割もみられます。これらの人では適正なバランスになるようとり過ぎない注意が必要です。
脂質とり過ぎ

脂質のとり過ぎは、ちょっとしたこころがけで改善できます。脂質の量を把握できる便利な方法に、”調理や食べる時に使う油脂”と、食品中の “素材に含まれる油脂”に分ける考え方があります。 例えば、脂質を1日に55gとる場合、”調理や食べる時に使う油脂”は15gほどが適量の目安です。これは朝食のトースト用バター(うすくぬって1枚に5g)と、昼食または夕食での油料理1食分(天ぷらやフライなど1人前に含まれる油10g)を合計した量にあたります。いつもこれより多いという人はとり過ぎの可能性があります。次に、食品中の”素材に含まれる油脂”をとり過ぎないようにするには、肉の脂身の多い部分や、高脂肪の乳製品をひかえるなどの配慮をしましょう。
・総脂質の総エネルギーに占める割合 脂肪エネルギー比率(%エネルギー)
- 目標量は脂肪エネルギー比率(%)で示されています。
脂肪エネルギー比率(%)=脂質(g)×9/総エネルギー(kcal)×100 - 妊婦、授乳婦では数値の掲載がありませんが目標量がないということではありません。通常時の目標量を参考にして適度な摂取が大切です。
脂質の不足
生活習慣病が社会問題となっており、肥満の原因となる脂質は、敬遠されがちですが、食事の量が少なくなりがちな高齢者の場合は、脂質の摂取量が不足すると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり、体の抵抗力が低下したりする可能性があります。
また、脂質とともに吸収される脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)が吸収されにくくなり、ビタミン欠乏になるリスクもあります。 反対に、肥満傾向の人は、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の原因になるため摂りすぎないように注意しましょう。
脂質を多く含む食品
脂質は、表2のとおり肉の脂身やラード、脂肪ののった肉や魚、コーン油や大豆油などの植物油、バターなどに多く含まれます。
飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸をバランスよく摂取するためにも、さまざまな食品から脂質を摂取するようにしましょう。飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸を多く含む食品は表3から5のとおりです。
見えない脂質に気をつけよう

脂質には、主に油脂類に含まれる『見える脂質』と、さまざまな食品に含まれている『見えない脂質』があります。『見える脂質』の油脂類とは、植物油・ラード・牛脂などです。ほぼ100%が脂質のため、使用量や摂取量を把握しやすいのが特徴です。また、バターやマヨネーズなどは、全体の7~8割の脂質を含んでいます。それに対して『見えない脂質』は、肉・魚・卵・穀物・豆などの一般食品から加工食品やインスタント食品まで、幅広い食品に含まれていて、私たちが普段とっている脂質のうち7~8割はこちらだと言われています。どのくらいの量が含まれているのか分かりにくいため、現代の脂質のとりすぎの盲点とも言えますね。『見えない脂質』を比較的多く含む食品の一例を挙げてみます。
・乳製品(生クリームやチーズに多い)
・スナック菓子(ノンフライ菓子でも表面に油が吹きつけてある場合がある)
・洋菓子
・ラーメン(汁だけでなく麺にも脂質が含まれている)
・カレーやシチュー(市販のルウには意外と脂質が多い)
・ベーコンやサラミ
・ドレッシング
・ごまやナッツ類
などです。無意識のうちに脂質をとりすぎていないか、普段の食生活を見直してみましょう。
では毎日どのようにして脂質の量を調整すればいいのでしょうか。脂質を多く含む食品のとり方に気をつけることはもちろんですが、 その他にも以下の3つをおすすめします。
①油脂は計量して使いましょう・・・目分量だと、ついつい入れすぎてしまったり、どのくらいの量を使っているのかわからなくなってしまいます。意識を高めるためにも、はかれる油脂ははかって使うようにしましょう。
例)植物油 大さじ1杯=約12g=約108kcal
②栄養成分表示を確認しましょう・・・栄養成分表示には、「脂質」の項目があります。『見えない脂質』を数値化したものですので、食品を選ぶときの参考にしましょう。
③1食・1日・1週間でそれぞれ調節しましょう・・・1食の中で、主菜は揚げもの、副菜は炒めものなんてことはありませんか?食品そのものから摂取する『見えない脂質』も考慮すると、油脂を使った調理方法は1食1品までにおさえておきたいところです。また、脂質の多い食事をとったら、その前後で調節をし、1日または1週間という単位で帳尻を合わせましょう。