食品添加物 乳化剤
乳化剤とは
食品に含まれる乳化剤の役割
乳化とは、水と油が混ざり合った状態のことをいいます。本来、水と油は相性が悪く一緒にしても混ざり合うことはありませが、ところが水とも油ともなじみやすい物質である乳化剤を加えかき混ぜることにより濁り、水と油の分離がなくなります。
乳化には水に油が分散しているO/W型と油に水が分散しているW/O型があります。
代表的なO/W型(水に油が分散している)の食品といえばマヨネーズがあります。マヨネーズは、水、食物油、酢(酢はほぼ水)、調味料に卵黄を加え激しくかき混ぜて作ります。
マヨネーズは卵黄に含まれるレシチンという物質が乳化剤として作用しています。このレシチンはとても体に良い物質で健康食品としても販売されています。
乳化剤の役割(使用目的)
水と油に相性が良い乳化剤は以下のような目的で使用されています。
乳化
前述したとおり水と油を混ぜる役割のために使用されます。混ぜる物質が液体の場合に乳化と言います。例、マヨネーズ、マーガリン
分散
乳化と似ていますが水や油に溶けない固体の粒子が沈殿したりせず混ざり合った状態を作ります。例、チョコレート
可溶化(溶けたように見せる)
一般的な乳化は溶かした物質が光の波長よりも大きいため白く濁った色になりますが、可溶化させることで溶けたように見せる(透明)ことができます。
溶けたように見せることができれば香料を飲み物などに添加することができます。
起泡(泡立てる)
泡立てることにより食品の使用用途が広がります。 例、ホイップクリーム、アイスクリーム
消泡(泡を消す)
混ぜたときにできる泡を消すための役割。例、豆腐、ジャム
離型・湿潤
食品を金型などから剝がれやすくする。ガムが歯にくっつかないようにする。
例、スポンジケーキ(離型)、ガム(湿潤)
品質改良
でんぷんが多い食品の品質改良、タンパク質が多い食品の品質改良。
例えば、パン。パンに乳化剤を使用することでしっとり感を出すことができます。無添加のパンは焼き立てから時間が経つとどんどん固くなるを防ぎます。
乳化剤の種類
2016年10月現在、日本で食品添加物として認められている乳化剤は次のようなものがあります。
- グリセリン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ソルビタン脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ショ糖脂肪酸エステル(合成乳化剤)
- ポリソルベート(合成乳化剤)
- ステアロイル乳酸カルシウム(合成乳化剤)
- リン酸塩類(チーズにのみ使用可)(合成乳化剤)
- レシチン(天然乳化剤)
- コレステロール(天然乳化剤)
乳化剤として認められているのは上記8種と書きましたが、実はこの8種だけではなく、これらの物質に他の物質を結びつけることでさらに細分化されさまざまな食品に使用されています。
チーズに使われている乳化剤
チーズに使用できる乳化剤はピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩など23種類の合成乳化剤が認められています。
これらは単純に乳を固めて熟成して作るナチュラルチーズではなく、複数のチーズやその他の材料(脱脂粉乳・牛乳・乳とは無関係な炭水化物・脂肪・タンパク質・香料など)を混ぜて作られるプロセスチーズを作る際に使われます。これらの材料は溶かして混ぜるだけではうまく混ざり合わないため、いわゆる「つなぎ」が必要です。このつなぎの役目をするのが乳化剤なのです。
チョコレートに使われている乳化剤
ミルクチョコレートの原材料は砂糖、カカオマス、植物油脂、全粉乳、ココアバター、ホエイパウダー、バターオイル、乳化剤(大豆由来)、香料です。これらは原材料中にある乳化剤(大豆由来)をつなぎとして使うことでうまく混ぜ合わさります。
大豆由来の乳化剤というのは大豆油の製造工程で分離され作られている物質でレシチンといいます。
チョコレートにはポリソルベートやグリセリン脂肪酸エステルの一種であるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなども使用されていることがあります。
パンに使われている乳化剤
パンに使われている乳化剤の例として以下のようなものがあります。
・ショ糖脂肪酸エステル
・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(ショ糖脂肪酸エステル)
・グリセリン脂肪酸エステル
・モノグリセド(パンには乳化剤としての目的ではなく品質向上を目的として使用)
・ジアセチル酒石酸モノグリセド(パンの生地向上の目的で使用)
・コハク酸モノグリセド(パンの生地改良の目的で使用)
・ポリグリセリンエステル(ショートニングを作る際に添加されていることがある。その場合は原材料の中の原材料なので表示はない。)
・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(こちらもパンの原材料のマーガリンの原材料として使用されていることがあります。
麦茶にも乳化剤が使用
麦茶に限ったことではないですが缶やペットボトルなどの容器に入った飲み物には乳化剤が使用されていることがあります。前述したように乳化剤の使用目的には可溶化(溶けたように見せる)や消泡(泡を消す)、品質改良などさまざまです。
麦茶などの容器に入った飲み物はさまざまな環境下に置かれる可能性があります。工場を出荷された後トラックでゴトゴト揺られますし、熱々の倉庫や凍ってしまうような場所に保管されるかもしれません。はたまた賞味期限が切れるまで全く動かされない可能性もあります。
賞味期限とは「美味しく食べられる期限」です。販売されている食品は製造から賞味期限が切れるまでは安定した常に同じ味、見た目、食感等を保たなくてはなりません。
そのために乳化剤が使用される場合があります。賞味期限を短く設定すれば添加物に関する問題は解決しますが企業的にはなかなか難しいと言えます。
また飲料水には酸化防止剤が添加されていることがほとんどです。食べ物は酸化することで変色や劣化するためです。
化粧品(クレンジング)に乳化剤が使われる理由
食品とは離れてしまいますが同じ乳化剤に関することなのでご説明します。
一般的な化粧品の原材料は以下の通りだそうです。
化粧品原料の主なものは油脂・ロウ類をはじめとする油性原料、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、色材類、香料などです。また、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、天然抽出物など
これを見ると油性原料と添加物なんですね。さらに添加物として界面活性剤が使用されています。界面活性剤=乳化剤なので恐らく油分と水分を安定して混ぜ合わせるために使用していると思います。
乳化剤と界面活性剤は同じ働きをするものですが使用用途によって呼び方が変わります。同じ物質でも食品に使用する場合は乳化剤、食品以外に使用する場合は界面活性剤と表記されます。
例えばポリソルベートという乳化剤をチョコレートに添加した場合の表記は乳化剤、化粧品に添加した場合の表記は界面活性剤となります。
話がそれましたがクレンジングに乳化剤(界面活性剤)が添加されている理由は、乳化剤が肌に塗った油分を活性化して落としてくれるためです。
大豆由来のレシチンという乳化剤
レシチンは昔から天然の乳化剤として食品添加物として利用されていました。レシチンはそもそも自然界の動植物の細胞の中にあるもので、その生体膜が主要構成成分なのです。たとえば卵黄が原料となるレシチンは卵黄レシチン、そして植物の大豆由来のレシチンは大豆レシチンと呼ばれています。レシチンの成分はリン脂肪酸で簡単にいうと脂肪が成分です。動物由来の卵黄レシチンはコレステロールを含有しますが、大豆由来のレシチンはコレステロールが含まれていません。
大豆レシチンは天然の乳化剤でチョコレート、マーガリン、ビスケット、ホイップクリーム、インスタントラーメンなどの原料となっています。乳化剤としてだけではなく、たとえば油がはね返るのを防いだり粘り気の度合いを低くする働きもあります。
乳化剤の成分や原料について
乳化剤は自然界に存在する天然の動植物などから得られる天然系と、化学的な手法によって元素や天然由来の物質の化合物を化学反応させて得た混合物などの合成系の成分から成り立っています。天然系の乳化剤にしても合成系の乳化剤にしても原料については、その乳化剤を商品として製造する各メーカーによって原料が選ばれており、とくに合成系の乳化剤の詳しい原料は一般の消費者には判断しきれないことがあります。
グリセリン脂肪酸エステルの成分と原料
グリセリン脂肪酸エステルは合成系の添加物です。古くから世界中で使われている代表的な乳化剤です。その成分はもともとの食品に含まれていたり、元素や天然由来の物質と化学反応させた化合物が成分になります。
そもそもは脂肪の仲間で、グリセリンと脂肪酸がエステル結合した合成物です。グリセリンの原料にはヤシの実の油やパーム油などの天然の植物から得たものと、石油を原料とした合成グリセリンがありますが、現在はほとんどが天然のものが使用されています。
アイスクリーム、パン、ケーキ、マーガリン、生クリームなどの原料に使われています。
ソルビタン脂肪酸エステルの成分と原料
日本で最も古くからある食品添加物であるソルビタン脂肪酸エステルも合成系の乳化剤です。成分はグルコースから得られた糖アルコールの一種であるソルビートと脂肪酸の化合物です。
グルコースの原料はもともと自然界にあるぶどう糖が発酵して得た甘味料や、大豆油や獣脂を分解したグリセリンなどが原料となります。乳飲料やアイスクリーム、清涼飲料水、チューイングガムの原料となります。乳化剤としてだけではなく豆腐の消泡や、パンやめん類などのでんぷん食品の改良などの目的で、豆腐やパンなどの原料に加えられています。
ショ糖脂肪酸エステルの成分と原料
ショ糖脂肪酸の成分はサトウキビなどに含まれるショ糖が原料となり、それに食用の油脂を反応させて得られた脂肪酸との化合物です。ショ糖はサトウキビやてんさいなどを原料にして得ています。また油脂の原料は牛脂、豚脂、魚油、鯨油などの動物油や、ヤシ油やパーム油などの植物油が原料となります。ならば天然系の乳化剤と思われますが、ショ糖と脂肪酸を化学的な手法によって化学反応させて得た合成物がショ糖脂肪酸の成分であるため、天然物質を原料とした合成系の乳化剤となります。アイスクリーム、パン、ケーキ、マーガリン、ホイップクリームなどの原料になります。
ポリソルベートの成分と原料
ポリソルベートもまた合成系の乳化剤です。成分はソルビタン脂肪酸の化学反応で作られた化合物です。グルコースを還元することで作られる糖アルコールの一種のソルビトールに脂肪酸を反応させて生成されるソルビタン脂肪酸エステルに有機化合物を反応させて得たソルビタン脂肪酸の化合物が成分です。
糖アルコールの一種のソルビトールの原料はリンゴやナシ、ナナカマドなどに含まれている糖質を原料としています。水に油が分散しているO/W型の乳化剤です。ケーキ、サラダのドレッシング、チョコレートなどの原料になります。
ポリソルベート
ポリソルベートはソルビタン脂肪酸エステルともいい、食品には乳化剤として使用されます。ポリソルベートは古くから食品添加物として使用されて、日本でも2008年に食品添加物として認可されています。
ポリソルベートとは
ポリソルベートは、糖アルコールであるソルビトール(ソルビット)を化学合成(長鎖脂肪酸をエステル反応)して作られるノニオン(非イオン)性界面活性剤です。
米国では1960年初めに、EUでは1995年にそれぞれ使用基準を定めた上で、その使用が認められている食品添加物で幅広く使用されています。
ノニオン(非イオン)性界面活性剤とは
水に溶けたとき、イオン化しない親水基をもっている界面活性剤で、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、他の全ての界面活性剤と併用できます。
この使いやすさと浸透性、乳化・分散性、洗浄性などの性能面での特徴が認められ、近年、非イオン界面活性剤の使用量の伸びは大きく、アニオン界面活性剤とならぶ主力界面活性剤になっています。非イオン界面活性剤は分子内の主要な結合の仕方により、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型およびその他に分類されます。
上記のように優れた浸透性、乳化・分散性などの特徴を持っているポリソルベートは、ノニオン(非イオン)性界面活性剤で、食品添加物以外に乳液や洗顔料などの化粧品や軟膏クリーム、注射剤、ドリンク剤など医薬品などさまざまな分野で使用されています。
また、ポリソルベートには4種類ありそれぞれ用途によって使用目的が異なります。
ポリソルベートの種類
ポリソルベートの種類は以下の4種類です。どれも基本のポリオキシエチレンソルビタンという物質に脂肪酸を結合させたものです。
このポリソルベートという乳化剤は水と相性が良くさまざまな食品に使用されています。
また、ポリソルベートの後に、20、60、65、80と数値が表記されていますが、これは数値が高くなるにつれて油に近い性質があり、低いほど水に近い性質になります。
ポリソルベート20
別名:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 20)
主としてラウリン酸を結合させた物質です。4種の中で一番に水によく溶けます。
ポリソルベート60
別名:モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 60)
主としてステアリン酸及びラウリン酸を結合させたものです。
ポリソルベート65
別名:トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 65)
主としてステアリン酸及びパルミチン酸を結合させたものです。他の3種に比べて油との相性がよく油によく溶けます。
ポリソルベート80
別名:オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)
主としてオレイン酸を結合させたものです。
使用用途
使用されている食品は、アイスクリーム、チョコレート、ドレッシング、ココア、インスタントラーメンの調味料、マヨネーズ、洋菓子、飴、野菜の漬物、チーズ、ショートニングなどです。
洋菓子の製造の際にショートニングを使用することにより滑らかさやしっとり感を出す場合がありますが、原材料表示ににはショートニングと記載されています。それは原材料の添加物のためです。
食品以外では薬用のクリームや化粧品などに使用されています。
また、ポリソルベートは、加熱等の処理をしなくても簡単に水と油を乳化することが出来るため、ポリソルベートを使用して化粧品手作りしている人もいます。
「手作り化粧品原料」として販売しているので誰で購入できます。
ポリソルベート20
作り方も非常に簡単で、水で流せるクレンジングオイルを作る場合には、化粧品用のオイル(オリーブオイル・ホホバオイルなど)にポリソルベートを加えて混ぜるだけなので数分でできてしまいます。
加える量は使用するポリソルベートの種類やお好みによって異なりますがオイルの量に対して20%~50%程度になります。また、香りを付けたい場合にはアロマオイルなどの精油を加えます。
毒性や安全性
ポリソルベート4種類に関し個々の化合物の安全性を示すデータはありません。日本で認可される際安全性に関し議論されており、染色体異常試験で陽性となり染色体に異常をきたす恐れがあるということです。
発がん物質と同時に動物に食べさせると胃がんの発症率が高まり、肉腫(筋肉や神経、骨などのがん)の発生の増加また悪性度の促進などが見れたそうです。
これはポリソルベート60での試験で他の3種についての記載はありませんが、規模の小さい試験なので問題にしなくてはよいという結論が出されました。
また、食品安全委員会(http://www.fsc.go.jp/)の食品健康影響評価で以下のような評価を行っています。
乳化剤である「ポリソルベート 20」、「同60」、「同65」及び「同80」(CAS番号:9005-64-5、9005-67-8、なし、9005-65-6)について、各種試験成績等を用いて食品健康影響評価を実施した。評価に供した試験成績は、反復投与毒性、遺伝毒性、発がん性、生殖発生毒性等である。
今回評価を行った 4 物質間に、体内動態及び有害影響について本質的な相違はみられないことから、これらをグループとして評価した。試験結果から、遺伝毒性、発がん性は認められなかった。反復投与毒性試験では、主な症状として下痢が認められた。Brubaker らの1 投与量によるラット神経発生毒性試験において、児動物の行動の変化が認められていることから、児の行動への影響を確認するための追加試験が行われ、7.5 vol%投与群で母体毒性が認められ、児動物に体重増加抑制及び条件回避反応試験で低回避率等が認められた。
以上のことから、ポリソルベート類の無毒性量(NOAEL)は、ラットを用いたポリソルベート60 の13 週間混餌投与試験において5%投与群にみられた下痢を根拠に1,000 mg/kg 体重/日と考えられることから、安全係数を100 とし、ポリソルベート類(ポリソルベート20、同60、同65 及び同80)の一日摂取許容量(ADI)をグループとして10 mg/kg 体重/日と設定した。
上記評価では、一日摂取許容量(ADI)「10 mg/kg 体重/日」であれば健康に影響を与えないとの評価をしています。
一日摂取許容量(ADI)は、人が生涯該当の物質を摂取し続けたとしても健康上問題なく安全である量で、「mg/kg/day」で表します。
このことから、ポリソルベートは科学的には一日摂取許容量(ADI)内であれば毒性がなく安全であるとみることができますが、事業者によっては「安全性を量的に判断できる科学的根拠はあるが、懸念すべき問題点がある物質」として使用制限添加物など独自に自主規制を行っているところもあります。
アメリカやEUで先に使用されてきた添加物なので日本でも使用を認めましょうといった安易な認可のようだとしたら安全性に不安が残ります。
カゼインナトリウム(カゼインNa)
牛乳に酸を加えて弱酸性にすると白い物質が沈殿します。この沈殿物はカルシウムを含むタンパク質でカゼインといい、主に食品の乳化剤や安定剤、強化剤のために使用されています。
カゼインとは
豆乳ににがりを加えて固まるのが豆腐なのに対し、牛乳に酸を加えて固まるのがカゼインです。
普段聞きなれていないので危険な食品添加物のように感じられますが通常食品として扱われています。
カゼインは乳タンパク質の80%を占めていて全ての必須アミノ酸をバランスよく含んだ物質です。そのため、非常に栄養価が高く、食品添加物としてだけでなくサプリメントなどの栄養補助剤としても使用されています。
カゼインを摂取するとアミノ酸が結合した複数のペプチドになります。これらペプチドの中には、カルシウム、ナトリウムの吸収を促し、これにより免疫力を強くしてれたり、腸の吸収を助けてくれたり、血圧の上昇を防いでくれます。
このカゼインは水に溶けないため、アルカリを加えて中和させます。中和させた(ナトリウム化)ものがカゼインナトリウム(カゼインNa)で、水によく溶けるようにすることにより使用できる幅を広げているのです。
カゼインナトリウム(カゼインNa)の用途
水に溶けるカゼインナトリウムは、水と油を均一に混ぜ合わせるための「乳化剤」や加工肉の赤肉と脂肪の乳化状態の安定ためなどの「安定剤」、加工食品の栄養強化(タンパク質の強化)のための「強化剤」として主に使用されています。
そのため、パン、アイスクリーム、ハム、ソーセージなど畜肉加工品、カマボコなどの水産練り製品、乳製品、菓子など、さまざまな食品に使用されています。
例えば、ミルク入りの缶コーヒーでミルク成分とコーヒーが分離しにくくなるよう使われています。缶コーヒーは出荷後温めたり、冷やしたり、自動販売機の中で動かさなかったりするので分離しがちなのかもしれません。
乳化の目的で使用されているとしてもカゼインナトリウム(カゼインNa)は、食品添加物ではなく食品なので乳化剤とは別に表記されます。
乳化剤は一括表示が認められている食品添加物のため、同じ目的で複数の物質を使用した場合の食品への表示は「乳化剤」のみでよいことになっています。
カゼインナトリウム(カゼインNa)の安全性
カゼインナトリウム(カゼインNa)は前述したとおり牛乳由来の成分なので安全だといえます。
一日許容摂取量(ADI)も定められていません。
動物を対象とした実験で動物の体重1kgに対して5日間毎日500mg経口投与したら半数が命に係わる結果がでたそうです。
これを人に例えると体重が70kgの人に毎日3.5gのカゼインを食べさせるということなので命にかかわりがあるのは当然です。
食物アレルギー
カゼインは牛乳由来の成分のため乳アレルギーをもつ人は注意が必要です。
牛乳は食物アレルギーを引き起こす頻度の高い食物アレルゲンの一つです。アレルゲンとは一般的にアレルギー症状を引き起こす原因となるものをいいます。
食物アレルギーとは
わたしたちの体の仕組みとして「自分」と「自分ではないもの」を識別して、「自分ではないもの」に対しては攻撃・排除しようとする免疫システムが備わっています。これはわたしたちの体を守るための仕組みです。
例えば、花粉症は体に入っても問題のない花粉(自分ではないもの)に過剰に反応して、くしゃみや鼻水で花粉を排除しようとする免疫による反応です。
食物アレルギーは、本来体に取り入れて栄養となるはずの食べ物(自分ではないもの)に含まれる食物タンパクが体に入ってくると、それを異物とみなし免疫システムが過剰に反応してアレルギー症状を引き起こす状態です。
乳アレルギー
乳アレルギーはカゼインと乳清タンパクに含まれるβ-ラクトグロブリンが原因だと言われています。カゼインとβ-ラクトグロブリンは耐熱性があるため加熱処理を施してもアレルゲン性は低下しません。
牛乳のタンパク質は牛乳全体の3.3%に相当し、おもにカゼイン(80%)と乳清タンパク(20%)で占められます。乳清タンパクはホエイ(ホエー)とも呼ばれます。ヨーグルトを放置しておくと溜まってくる上澄み液のことです。
乳清タンパクにはβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、血清アルブミンという物質などが含まれます。このうちβ-ラクトグロブリン以外の二つの物質(α-ラクトアルブミン、血清アルブミン)は加熱することでアレルゲンが低下するといわれています。
牛乳の発がん性
人間の消化器官は動物性タンパク質を効率よく分解するよう作られていないため、継続的に摂取し続けると分解されずに体内に蓄積され、ゆくゆくは癌細胞の発生を助長する可能性があるといった程度の問題のようです。
牛乳に含まれているタンパク質の約80%を占める「カゼイン」が胃の中に入ると、胃酸やタンパク質を分解する酵素(ペプシン)のはたらきでいったん固まりますが、その後ゆっくりと確実に分解(消化)されます。
タンパク質が酸などの作用で固まる現象を「凝集」と呼びます。凝集によって消化酵素がはたらきにくくなると考えるのは間違いです。
また特定の食物ががんのリスクを上げるのか、下げるのかという問題について世界で一番権威のあるのがWCRF(世界がん研究基金)による「Food,Nutrition,Physical Activity,and the Prevention of Cancer」というものだそうで最新のものは2007年のものです。
これによると、
- 牛乳は大腸がんのリスクを低下させる可能性が大きい。
- 牛乳は膀胱がんのリスクを低下させる可能性がある。
- 牛乳、乳製品、チーズは前立腺がん、大腸がんのリスクを上昇させる可能性がある。
ということです。
ちなみにチーズはカゼインが原料ですが、その後の研究でそこまでリスク上昇の可能性は高くないのではないかとされているそうです。なお、この研究の成果は最新のものが2017年に出てくるとされています。
欧米人と日本人では食生活も異なり牛乳自体が広く飲み始められた時期も異なります。日本では第二次世界大戦後にアメリカの影響で食生活が欧米化し広く飲まれるようになったとのことです。
欧米人のデータではなく日本人のデータによる発がんリスクの可能性が知りたいところですが、現時点ではデータ不十分のようです。
プロピレングリコール
プロピレングリコールという物質名を聞いたことはありますか?安全性が高く、無色透明な液体の形状をしていますが、主に食品以外の用途に使われている毒性のある物質であるとされています。
プロピレングリコールとは
プロピレングリコールとは、保湿剤や乳化剤として使用されることの多い有機化合物の一つです。また、少しの粘性があり、水や精油、樹脂などに溶解することから様々な溶剤として用いられることの多いアルコールでもあります。
インクなどの溶剤や洗剤の安定剤、化粧品の保湿剤、内服薬や注射液を調剤する際の溶剤などとして使用されることがあります。
さらに、この物質と脂肪酸がエステル結合してできたプロピレングリコール脂肪酸エステルという化合物がありますが、これは食品や化粧品用の乳化剤、油脂などの加工の際に使用されています。ただ、プロピレングリコール脂肪酸そのものの乳化剤としての働きはさほど大きくないため、他の乳化剤と併用して補助的に用いられることが多いようです。
用途や使用されている食品
プロピレングリコールは、化学的に安定した物質であり、低用量の摂取であれば毒性は低いとされている上、かすかな苦味はあるものの、甘味のある無臭の物質であることから、様々な食品添加物として使用されています。
例えば、防カビ性がある特性を活用して、麺類やおにぎりなどの品質保持剤として使われたり、保湿性があることから餃子や春巻きなどの皮、イカの燻製品に使われたりしています。また、チューインガムの軟化剤として使用されることもあるようです。さらに、水やエタノールをはじめとする様々な溶媒に溶けやすい性質があることから、着色料や香料などの添加物の溶剤としても幅広く使用されています。
プロピレングリコールは、食品に直接使用される用途は限られているようですが、間接的には幅広く使われていることがあるようです。
プロピレングリコールの安全性
プロピレングリコールは、食品添加物や他の用途でも、一般的に使用される際には原液を薄めたものを使っているので、低用量の摂取であれば健康上問題ないとは言われています。
しかし、元は自然由来のものではなく、毒性の強い有機化合物であることに変わりはありません。そもそも、私たちの目や皮膚に触れた場合、発赤、炎症などの刺激をもたらす可能性のある物質とされてます。さらに誤飲してしまうと、脳、肝臓、心臓などに障害をもたらしたり、溶血したりする危険性もあります。
また、プロピレングリコールは法律で危険物第4類として分類されており、生活環境保全条例においては規制対象物質とされている側面も持っています。
使われる量が微量とはいえ、この毒性の強い物質が、食品はもちろん、化粧品類やシャンプー、リンスなど、私たちが日常的に直接肌にのせて使用するものに多く使われているということは事実として知っておくべきでしょう。
犬や猫などのペットに対する毒性について
近年、犬や猫を家族同様に可愛がるペットブームの傾向から、人間の食の健康同様に、多くのペットに与えられている市販のペットフードやサプリメント、おやつなどにも愛玩動物の健康に影響がないかどうかと問われる声が上がるようになりました。
そんな中で、ペットフードに関してアメリカで大規模な愛玩動物の健康被害の問題が発生し、日本にも輸入されていたそのフードが輸入メーカー側より自主回収された事件がありました。日本では被害が出なかったものの、それがきっかけとなりますますペットフードへの不安の声が高まり、それまで規制がなかった愛玩動物のフードについて、2009年6月1日に環境省と農林水産省の管轄のもとで「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」が施行され、ペットフードに対して基準や規制の検討がなされるようになりました。
その中で、プロピレングリコールは猫用のフードには製造の基準の添加物に用いてはならないという基準が決められています。これは調査データーや科学的なデーターをもとに検討された結果から決められたものです。
犬のセミモイストタイプのフードにおいては、試験結果からは健康に影響は出なかったと報告がなされており、保湿効果を向上させることやソフトな感じを出すために使用されています。
しかし猫についてはプロピレングリコールを添加したものを摂取すると赤血球の表面に免疫抗体が結合して赤血球が破壊されてしまい貧血を起こすというハインツ小体を発症するとか、赤血球数の変化が見られるという試験結果があり、それにより猫用のフードにはプロピレングリコールの添加は禁止されています。平成26年3月の「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律」の中でもその規定にいまだ変わりありません。
グリセリン
グリセリンとは代表的な三価のアルコールのことで、甘味があり粘稠な無色透明な液体です。石鹸製造の副産物として得られました。現在は、食品添加物として乳化剤、保存料、甘味料、医薬品や化粧品の原料といった様々な用途があります。
グリセリンとは
グリセリンとは三価のアルコールのことで、グリセリンが脂肪酸とエステルを形成したものがグリセリン脂肪酸エステルで、別名油脂と呼ばれています。
一口にグリセリン脂肪酸エステルといっても、様々なものがあり、例えば高級脂肪酸と呼ばれている、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸があります。これらは天然の油脂を構成しています。
他にも、ギ酸、酢酸といった飽和脂肪酸、アクリル酸、メタクリル酸といった不飽和脂肪酸があります。
また、グリセリン脂肪酸エステルは代表的な食用品乳化剤の1つです。乳化剤とは水と油のようにお互い混ざり合うことのない2種類の液体を、安定した乳濁液にさせる事ができる第三の物質のことを指します。
グリセリン脂肪酸エステルの種類
飽和脂肪酸に含まれるのが、ギ酸、酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸で、不飽和脂肪酸に含まれるのがアクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸です。
不飽和脂肪酸を構成脂肪酸にもつ油脂の中には、常温で固体の油脂に変化するものがあります。このようになったものを硬化油といい、マーガリンなどの原料に使われています。
マーガリンは精製した動植物油とその硬化油を混ぜ合わせ、これに食塩・乳化剤・香料・ビタミンA、Dなどを加えて練り固めた、バターに似た食品で、パンなどによく塗るため世間ではお馴染みの食品だと思われます。19世紀末頃からマーガリンはつくられ、当初はバターの代用品と認知されていましたが、今日のものは風味、栄養ともにバターに匹敵しています。
グリセリンの用途や使用されている食品
グリセリンは様々な用途で使われており、薬品・化粧品などの原料の他、食品添加物としても用いられています。グリセリンを含むものとしては、マーガリンやシリアル、お菓子などといった様々なものがあります。
昨今、食品添加物が含まれるものは身体に良くないから摂取すべきではないという風潮がありますが、この考え方は少し間違っています。グリセリンは比較的毒性が低く、食べ物に含まれる量であれば全く問題がなく安全であると言えます。だからと言って過剰に身体に取り入れれば、いくらか悪影響が出るので、バランス良く摂取するのが良いでしょう。
食品添加物が含まれているから、これは健康に悪いと決めてかかるのではなくて、適当な用量であれば身体に悪いわけではないと理解して、日々の食生活の中に取り入れていければ良いのではないでしょうか。
ショ糖脂肪酸エステル
ショ糖脂肪酸エステルは、水に溶けるショ糖と油に溶ける脂肪酸(植物由来)で構成された非イオン性の界面活性剤です。界面活性剤は洗剤の成分表示で見かけますが、実は食品添加物として使用される乳化剤と同じなんです。
今回はショ糖脂肪酸エステルの特徴や危険性をしらべてみました。
ショ糖脂肪酸エステルとは
ショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖と脂肪酸が結合した非イオン界面活性剤で、食品添加物の一つです。別名はシュガーエステルやSE。
何が原料?製造方法は?
ショ糖は、砂糖の主成分です。
ショ糖とはぶどう糖に果糖が結びついた物質で1つの分子には水になじむ部分が8箇所あります。この8箇所に植物由来の脂肪酸を結合させ(この結合をエステル結合といいます)作られます。
ショ糖脂肪酸エステルの用途は?
ショ糖分子の水になじむ部分8箇所に脂肪酸を結合させて作られるショ糖脂肪酸エステルですが、脂肪酸を結合させるとその砂糖は甘くなくなり無味無臭となります。甘くなるなくなるということは原料は砂糖でも用途は甘味料ではなくなります。
水になじみやすいショ糖と、油になじみやすい脂肪酸が結合したショ糖脂肪酸エステルは食品には乳化剤として使用されます。
乳化剤は食品衛生法での分類のことで食品以外では界面活性剤と呼ばれます。界面とは物質の境界(表面)のことです。その境界に付着して作用する物質が乳化剤(界面活性剤)です。
その作用は水と油を混ざりやすくするといった乳化以外にも可溶化(溶けたように見せる)、分散、起泡、消泡、湿潤、でん粉の老化防止、洗浄、製造工程の改善、食感の改善などさまざまです。
ショ糖脂肪酸エステルの使用目的とは?
パン類
ボリュームを増やしたり食感の改善に使用されます。また生地を冷凍保存する際の劣化防止にも使用されます。パン生地が劣化せずに冷凍できれば大きな工場で製造・成形し冷凍し、店舗では焼くだけといったことが可能となります。
ご飯類
ご飯の表面で作用することにより粒のほぐれを良くすることができます。外食などでご飯の量を均一にするために炊いたご飯を機械でお茶碗に入れているところには非常に便利です。
麺類
茹で麺の品質劣化を防ぎます。また麺に含まれるデンプンがお湯に溶けだすのを防ぎます。
また冷凍した麺同士がくっつかないようにする効果もあります。
クッキーやビスケットなど
サクサクした食感や口どけをよくすることができます。
ちくわやかまぼこなどの練り物
保水性や食感(弾力性)の向上やデンプンの劣化による品質の劣化を防止します。
その他
天ぷら、天ぷら粉、インスタントラーメン、ケーキ、餃子、シュウマイ、中華まん、缶コーヒー、缶紅茶、飴、キャラメル、ガム、カレーのルー、食肉加工品、豆腐、ドレッシング、マーガリン、乳飲料など。
ショ糖脂肪酸エステルの安全性
ショ糖脂肪酸エステルが日本で食品添加物として認可されたのは1959年です。それ以降、特に使用中止が検討されたことはありません。
また、使用基準(対象食品、使用料、使用制限)も設定されていません。ということはどんな食品にどんだけたくさん使用しても問題ないということです。
食品添加物専門家合同委員会(FAO/WHO)などの国際機関でも安全性の高さは認められており、欧米はもちろん、世界各国で食品添加物としてもちいられています。
ショ糖脂肪酸エステルの危険性
ショ糖脂肪酸エステルは、多量に摂取すると下痢を起こすことが指摘されています。
ですが、ショ糖脂肪酸エステルは乳化剤等の食品添加物ですから、それ自体を摂り過ぎてしまう心配はほとんどありません。
それ以外に心配されている点としては、以下のものがあります。
ショ糖脂肪酸エステルの種類
前述しましたがショ糖脂肪酸エステルはショ糖の分子8箇所に脂肪酸が結びついた物質です。
この結びつくところを仮に1番~8番と呼ぶことにします。
現在の製造技術では1番だけに結び付けたり4番と5番にだけ結びつけるといったことができません。いくつ結びつけるかということは可能ですが、「どこに」ができないということです。
(研究レベルでは可能ですが工業的に低コストでつくることはできません。)
脂肪酸が結びついている場所が違うということは別の物質と言えます。
また結びつける脂肪酸の種類を変えることで性質が変わり、それにより幅広い機能を持たせることができるわけです。と簡単に説明しましたが、結びつける脂肪酸の種類が変わっても名称はショ糖脂肪酸エステルのままなのです。
このようにショ糖脂肪酸エステルにはさまざまな種類がありますが、一部の安全性の試験によって安全だと言っているのです。
妊娠中は控えた方がいいのか?
いろいろなサイトにショ糖脂肪酸エステルには、催奇性や、染色体異常を引き起こす恐れがあると書かれていますが食品安全員会などいろいろ調べましたが大元のソース(情報)は見つかりませんでした。
国際機関であるFAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA)は、ショ糖脂肪酸エステルをADI(使用基準)を特定しない物質として評価しています。また本物質を食品を通じてヒトの健康に影響を与えるものとは考えられないとも評価しています。
また、欧州食品安全機関(EFSA)は平成19年(2004年)にショ糖脂肪酸エステルのTDI(耐容一日摂取量)を30mg/kg体重/日から40mg/kg体重/日に改めています。
TDI(耐容一日摂取量)とは
耐容一日摂取量(たいよういちにちせっしゅりょう)とは、ヒトがある物質を生涯にわたって継続的に摂取した際に、健康に悪影響を及ぼすおそれがないと推定される1日当たりの摂取量のことです。
ショ糖脂肪酸エステルはヒトに摂取されるとショ糖と脂肪酸に加水分解され、それぞれ代謝されるので安全性は高いとされています。
結論は、ショ糖脂肪酸エステルは、催奇性や、染色体異常を引き起こす恐れ、発がん性のリスクも特に報告されておらず安全性の高い食品添加物といえるでしょう。
ショ糖脂肪酸エステルを避ける
ショ糖脂肪酸エステルは乳化剤です。
乳化剤は一括表示が認められた食品添加物なので、複数の乳化剤を使用した場合は乳化剤とだけ記載すればよいことになっています。
ですから特定の物質だけ避けるのは容易ではありません。
どうしても気になるようなら乳化剤の入っていない食品を選びましょう。
ただ、ショ糖脂肪酸エステルは、それほど神経質になる必要はありません。簡単に避けられるケースなら避けるにこしたことはありませんが、そうでないならあまり気にしすぎずに。できれば、知識としてだけは備えておきましょう。
乳化剤の危険性
乳化剤は一括表示が許されている食品添加物です。
一括表示とは、類似の性質、作用、効果をもつ複数の添加物を使用する場合一括(ひとまとめ)して表示してもよいということになっています。
ただし、一括表示は定められた用途以外の使用は認められません。乳化剤の一括表示が認められる場合の使用目的は、食品の乳化・起泡です。それなのに実際にはパンやスポンジケーキなどには品質保持が目的で使用され堂々と一括表示されています。
認可されている乳化剤は8種ですが、それぞれが別の物質と結びつくことで無数の乳化剤となり食品に添加されています。
なにがどれだけ結び付けられていても食品への表示は『乳化剤』でよいのです。
また近年、問題視されている食物アレルギーについての乳化剤の影響も消費者にとっては心配する点です。しかしながら現在のところ、とりわけ乳化剤が原因でアレルギーを起こしたという問題は起こっていません。ある研究チームは乳化剤の原料となる大豆油について動物を用いてアレルギー反応のテストをしたところ、乳化剤に含まれる大豆油ではアレルギー反応の心配はされないと報告されています。また厚生労働省の調べからは、乳化剤のステアロイル乳酸カルシウムの抗原性についてモルモットを使ってテストをした結果、皮膚反応などは観測できないと報告があります。
しかしながら、乳化剤のアレルギーに対する影響については、成分や原料がアレルゲンであるかどうか、また抗原性があるかどうかなど検討すべき部分もまだ多く残っており、症例や発症するかどうかの検証が今後の国の課題とされているところだそうです。
乳化剤のアレルギー表示について
食物アレルギーの予防は、個々が食品を摂取するときに自分の持つアレルゲンを摂取しないことが大切であることから、厚生労働省では、アレルギー物質を含む特定原材料を25品目指定して、これらの食品表示について指導をおこなっています。それは乳化剤をはじめとする食品添加物においても同様です。
乳化剤などの食品添加物の中に、厚生労働省が定めるアレルギー物質とされる特定原材料が含まれている場合は、それが消費者に判断できるように表示することが必要だとされているのです。たとえば「物質名(〇〇由来)」とか「一括名(〇〇由来)」とか「用途名(物質名:〇〇由来)」などと記載する必要があるとされていることは、たとえば乳化剤が一括表示であっても、食品のアレルギーの危険性に対しては少々安心する点もあります。
乳化剤の危険性をまとめると、
- 個々の物質を食品に添加した際の安全性の詳しい試験がされていない。
- 不純物が含まれる割合が法令で定められていない。(品質が悪くても違法ではない)
- 一括表示が認められている。
現状では乳化剤を食べる我々消費者には選択の余地がないということになってしまっています。