七十二候
日本では、江戸時代に入って日本の気候風土に合うように改定され、「本朝七十二候」が作られました。現在主に使われているのは、明治時代に改訂された「略本暦」のものです。
「気候」ということばは、この「節気」と「候」から出来たといわれています。
七十二候の名称は、気候の変化や動植物の様子が短い文で表されて、私たちの暮らしでは目にする機会の少ない事象もありますが、おおかたはその時期の「兆し」を伝え、繊細な季節のうつろいを感じさせてくれてるのかも知れません。
春
二十四節気「立春(りっしゅん)」
春の風が川や湖の氷を解かし始める頃。「東風」(こち)とは春風を表す代名詞。
・黄鴬睍睆(うぐいすなく)2月9日頃
山里で鴬が鳴き始める頃。春の訪れを告げる鴬は「春告鳥」(はるつげどり)とも呼ばれています。
・魚上氷(うおこおりをいずる)2月14日頃
水がぬるみ、割れた氷の間から魚が飛び跳ねる頃。春先の氷を「薄氷」と呼びます。
二十四節気「雨水(うすい)」
二十四節気「清明(せいめい)」
燕が南の国から渡ってくる頃。「玄鳥」(げんちょう)とは燕の異名です。
・鴻雁北(こうがんかえる)4月10日頃
雁が北へ帰っていく頃。雁は夏場をシベリアで、冬は日本で過ごす渡り鳥です。
・虹始見(にじはじめてあらわる)4月15日頃
雨上がりに虹が見え始める頃。淡く消えやすい春の虹も次第にくっきりしてきます。
二十四節気「穀雨(こくう)」
水辺の葭が芽吹き始める頃。葭は夏に背を伸ばし、秋に黄金色の穂をなびかせます。
・霜止出苗(しもやみてなえいずる)4月25日頃
霜が降りなくなり、苗代で稲の苗が生長する頃。霜は作物の大敵とされています。
・牡丹華(ぼたんはなさく)4月30日頃
牡丹が大きな花を咲かせる頃。豪華で艶やかな牡丹は「百花の王」と呼ばれています。
夏
二十四節気「立夏(りっか)」
蛙が鳴き始める頃。水田の中をスイスイ泳ぎ、活発に活動を始めます。「かわず」は蛙の歌語・雅語。
・蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃
みみずが地上に出てくる頃。畑土をほぐしてくれるみみずは、動き始めるのが少し遅めです。
・竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃
たけのこが出てくる頃。たけのこは成長が早く、一晩でひと節伸びると言われています。
二十四節気「小満(しょうまん)」
二十四節気「芒種(ぼうしゅ)」
かまきりが卵からかえる頃。ピンポン球ほどの卵から数百匹の子が誕生します。
・腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)6月10日頃
草の中から蛍が舞い、光を放ち始める頃。昔は腐った草が蛍になると考えていました。
・梅子黄(うめのみきばむ)6月15日頃
梅の実が黄ばんで熟す頃。青い梅が次第に黄色みをおび、赤く熟していきます。
二十四節気「夏至(げし)」
二十四節気「小暑(しょうしょ)」
熱い風が吹き始める頃。温風は梅雨明けの頃に吹く南風のこと。日に日に暑さが増します。
・蓮始開(はすはじめてひらく)7月12日頃
蓮の花が咲き始める頃。優美で清らかな蓮は、天上の花にたとえられています。
・鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)7月17日頃
鷹の子が飛ぶ技を覚え、巣立ちを迎える頃。獲物をとらえ一人前になっていきます。
二十四節気「大暑(たいしょ)」
桐の花が実を結び始める頃。桐は箪笥や下駄など暮らしの道具に欠かせないものです。
・土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)7月28日頃
土がじっとりとして蒸し暑くなる頃。蒸し暑いことを「溽暑(じょくしょ)」と言います。
・大雨時行(たいうときどきふる)8月2日頃
ときどき大雨が降る頃。むくむくと湧き上がる入道雲が夕立になり、乾いた大地を潤します。
秋
二十四節気「立秋(りっしゅう)」
二十四節気「処暑(しょしょ)」
綿を包むガクが開き始める頃。綿の実がはじけ白いふわふわが顔をのぞかせた様子。
・天地始粛(てんちはじめてさむし)8月28日頃
天地の暑さがようやくおさまり始める頃。「粛」は縮む、しずまるという意味です。
・禾乃登(こくものすなわちみのる)9月2日頃
いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃。「禾」は稲穂が実ったところを表した象形文字。
二十四節気「白露(はくろ)」
草に降りた露が白く光って見える頃。朝夕の涼しさが際立ってきます。
・鶺鴒鳴(せきれいなく)9月12日頃
せきれいが鳴き始める頃。せきれいは日本神話にも登場し、別名は「恋教え鳥」。
・玄鳥去(つばめさる)9月17日頃
燕が子育てを終え、南へ帰っていく頃。来春までしばしのお別れです。
二十四節気「秋分(しゅうぶん)」
雷が鳴らなくなる頃。春分に始まり夏の間鳴り響いた雷も、鳴りをひそめます。
・蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)9月28日頃
虫たちが土にもぐり、入口の戸をふさぐ頃。冬ごもりの支度をする時期です。
・水始涸(みずはじめてかるる)10月3日頃
田んぼの水を抜き、稲刈りの準備をする頃。井戸の水が枯れ始める頃との説も。
二十四節気「寒露(かんろ)」
二十四節気「霜降(そうこう)」
山里に霜が降り始める頃。草木や作物を枯らす霜を警戒する時期です。
・霎時施(こさめときどきふる)10月28日頃
ときどき小雨が降る頃。「霎」をしぐれと読むことも。ひと雨ごとに気温が下がります。
・楓蔦黄(もみじつたきばむ)11月2日頃
楓(かえで)や蔦の葉が色づく頃。晩秋の山々は赤や黄に彩られ、紅葉狩りの季節です。
冬
二十四節気「立冬(りっとう)」
二十四節気「小雪(しょうせつ)」
陽の光も弱まり、虹を見かけなくなる頃。「蔵」には潜むという意味があります。
・朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)11月27日頃
北風が木の葉を吹き払う頃。「朔風」は北の風という意味で、木枯らしをさします。
・橘始黄(たちばなはじめてきばむ)12月2日頃
橘の実が黄色く色づき始める頃。常緑樹の橘は、永遠の象徴とされています。
二十四節気「大雪(たいせつ)」
空が閉ざされ真冬となる。空をふさぐかのように重苦しい空が真冬の空です。
・熊蟄穴(くまあなにこもる)12月12日頃
熊が穴に入って冬ごもりする頃。何も食べずに過ごすため、秋に食いだめをします。
・鱖魚群(さけのうおむらがる)12月17日頃
鮭が群がって川を上る頃。川で生まれた鮭は、海を回遊し故郷の川へ帰ります。
二十四節気「冬至(とうじ)」
夏枯草が芽をだす頃。夏至の「乃東枯」に対応し、うつぼ草を表しています。
・麋角解(さわしかのつのおつる)12月27日頃
鹿の角が落ちる頃。「麋」は大鹿のことで、古い角を落として生え変わります。
・雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)1月1日頃
雪の下で麦が芽をだす頃。浮き上がった芽を踏む「麦踏み」は日本独特の風習です。
二十四節気「小寒(しょうかん)」
二十四節気「大寒(だいかん)」
雪の下からふきのとうが顔をだす頃。香りが強くほろ苦いふきのとうは早春の味。
・水沢腹堅(さわみずこおりつめる)1月25日頃
沢に厚い氷が張りつめる頃。沢に流れる水さえも凍る厳冬ならではの風景です。
・鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)1月30日頃
鶏が鳥屋に入って卵を産み始める頃。本来、鶏は冬は産卵せず、春が近づくと卵を産みました。